第48話 奪還
(再び襲いかかるエリス。葵は持ち前の格闘で応戦する。しかし・・・・・・)
「そろそろ休まれたほうが・・・」
姫川さんが心配そうな顔をして私を見ていた。
「いえ、まだ大丈夫です」
私は彼女に心配をかけまいと笑顔で手を振った。
しばらくサボっていたからかな。
いつもと同じ距離を走っているのに、体が重く感じた。
だけど、これは危険だという信号なんだ。
一日の遅れを取り戻すには三日かかるって言うけど、その言葉に間違いないことが実感できた。
格闘戦にはそこそこ自信があったのに・・・・・・。
ステイアにも、エリスというロボットにもまるで歯が立たなかった・・・・・・。
相手がロボットだから、って言い訳もできないわけじゃないけど。
私はそんな風に逃げたくはない。
相手が誰であろうと、力と技術のぶつかり合いであることに違いはないから。
あの時、私がしっかりしていれば”管理者”のことだって訊き出せたハズなのに。
あのロボットがフュールベを連れ戻そうとしていたのは間違いない。
ということは、近いうちにまたエリスか、他のロボットがやって来る。
今度はいままでのようにはいかない気がする。
万が一にも私たちが負けるようなことがあれば・・・・・・。
その時は、本当に死を覚悟しなければならないかも知れない。
姫川さんにばかり頼ってはいられない。
もっと・・・・・・もっと強くならないと・・・・・・。
「松原さん、もう1時間以上も経ってます!」
飛ばし気味な私に、姫川さんが駆け寄ってくる。
「大丈夫ですから」
「でも・・・・・・」
「こうして体を動かしてないと不安なんです・・・・・・」
「・・・・・・」
それだけ言って、私はまたシャドーを続けようとした。
「・・・・・・え?」
突然、姫川さんが私の右腕を掴んだ。
「急にそんなに動いたら、体に負担がかかります」
「ええ、ですけど・・・・・・」
「お願いです。今日はもうここまでにして下さい」
私の腕を掴む力が強くなった。
姫川さんがこんなに主張することは珍しい。
何か理由があるのかな・・・?
「お願いです。今日はもうここまでにして下さい」
「どうかしたんですか?」
「ええ、松原さんには体力を温存しておいて欲しいんです」
「それはどういう・・・・・・?」
私の言葉に松原さんはようやく練習の手を止めてくれた。
「エリスです」
「・・・・・・」
「エリスがやって来ます」
松原さんの表情が曇った。
ほとんど勝ち目のない闘いだったから、彼女がこんな反応を見せるのは当然のことかもしれない。
「どうなるんですか・・・?」
「エリスは私たちを攻撃してきます。その先のヴィジョンも浮んでいますから、最悪の結果は免れるでしょうが・・・」
断片的に浮かぶ”未来”を彼女に告げる。
「ただ、松原さんがおっしゃったように、あのロボットの狙いはフュールベにあるようです。エリスはフュールベを
連れて・・・・・・地下・・・? どこかの建物に向かうのが見えます」
「そうですか・・・・・・」
松原さんにとっても辛い未来のハズだ。
フュールベが連れ去られるということは、今度もまた私たちはエリスに負けることになるのだから。
だけど、彼女は私が思っているよりもずっとずっと強いみたい。
「それでも私は諦めません。姫川さんの能力を信じてますけど、最後まで闘い抜いてその未来を変えてみせます」
彼女の言葉と、その目に宿る意志の強さが頼もしかった。
「私もです。私も最後まで闘います」
「姫川さん・・・・・・」
松原さんが私の両手をとる。
「・・・・・・待って下さい!」
私の頭に突然、膨大な量のヴィジョンが送り込まれる。
「姫川さんっ!?」
映し出されたのはフュールベが連れられた施設。
いつかテレビで見たような、どこかの軍事基地のような雰囲気だった。
無機質な金属で覆われた壁・床・天井。
長い廊下の向こうに何かが見える・・・・・・。
何か巨大なものが・・・・・・。
「・・・・・・!!」
そこで予知は途切れた。
相変わらずこの能力だけは制御できない。
「大丈夫ですか・・・? 顔色が悪いようですけど・・・・・・」
「え、ええ・・・何とか・・・・・・」
「何か・・・見えましたか・・・?」
「よく分かりません。建物の中らしいのですが、それ以外は何も・・・・・・」
「来ましたよ!」
私の言葉はそんな彼女の声に遮られた。
来たって・・・?
彼女の指差した方向を見ると、そこには・・・・・・。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
一体、どこからやって来たというのか。
いつの間にか敷地内にいたエリスが言った。
余裕の笑みを浮かべて。
「今日はTETE−1を連れ帰るわ。中にいるんでしょ?」
「TETE−1・・・それがフュールベの名前なんですね」
「フュールベ? まぁいいわ。今回受けた任務は、TETE−1の奪還だけよ」
エリスが油断なく2人を見て言った。
「だから抵抗しなければ、あなたたちに危害は加えないわ。今回にかぎりね」
琴音が前に出た。
見る限り、恐れを抱いてはいないようだ。
「誰の命令かは知りませんが、それはつまり事態が切迫してるって事ですね」
「・・・・・・大した推理力ね。しかも当たってる。そうよ、さすがに上の存在までは知らないだろうけど、あなたの
考えどおりよ」
「そしてどこかの施設に連れて行く・・・・・・」
「・・・・・・!!」
エリスの表情から余裕が消えた。
こういう駆け引きは葵よりも琴音のほうが得意なようだ。
「あなた・・・この前も不可解な力を使ったけど・・・・・・サイ能力者ね」
エリスは琴音をマークしたようだ。
「データベースには科学で完全に解明できない現象・能力としかなかったわ。まったくアテにならない情報源ね。
それにしても・・・・・・解析できない力ってのは厄介ね」
「人間だからですよ。あなたたちロボットに、こんなことはできませんからね」
今度は琴音が優勢に立った。
ただし駆け引きの中でだ。
「ずいぶん言ってくれるじゃない? でも立場を考えてから発言したほうがいいわよ?」
「あなたに私たちを死に追いやることはできませんよ」
「そうかしら?」
「そうですよ」
琴音がそこまで言い切るのは、決して根拠のない強がりからではない。
彼女には見えたのだ。新たなヴィジョンが。
エリスがこの場から消え、2人は生きているという光明のヴィジョン。
しかし無傷であるとは限らない。
そこまでは予知できなかった。
「人間って思ってた以上に愚かね。学習しないんだから」
エリスが構えた。
前回と同じ構えだ。
だからこそ彼女が先鋒を務めようとしたのだろう。
「今度は前のようにはいきませんよ」
葵だ。
彼女がエリスに対して敵意を露にしている。
「いいわよ。じゃあ、まずはあなたからね」
エリスは前に伸ばした右手を上に向け、手招きした。
それに応えるように葵が間合いを詰める。
先にしかけたのはエリスだった。
素早く一歩踏み込み、上段回し蹴りを放つ。
葵はそれを背をそらせて余裕で避ける。
間髪入れずにエリスがパンチの連撃をしかける。
だが葵はそれすらも予測していたように、悠々と体を反らせる。
琴音の目でようやく追いきれるほどのエリスの猛攻に、葵はまるで示し合わせたようなダンスを披露している。
なおも攻撃の手を緩めないエリスだったが、彼女がいかに攻めようとも葵はそれを的確に避ける。
とはいえロボットのスピードは尋常ではない。
余裕そうに見えて葵にもきわどい瞬間が何度かあった。
彼女はそんなエリスの動きに焦ることなく、体のひねりと両腕だけで冷静にさばくのだ。
まるで別人だ。
エリスはそう思ったのだろう。
慌てて琴音の方を向く。
もしかしたら彼女がなにかやっているのではないかと考えたのだ。
琴音は成り行きを見守っているだけだった。
何もしていない。
「はぁっ!」
葵の上段キックがエリスを捉えた。
かに見えたが、わずかのところで身を屈めこれをかわす。
「よそ見している暇はありませんよ」
葵が構えなおした。
「・・・・・・そうみたいね。だけど、警戒するほどじゃないわね」
「そうでしょうか?」
「ええ、そうよ。だって私のほうがずっと強いんだもん」
エリスはそれを証明してみせた。
今までで一番速い踏み込み。
これが彼女の性能で実現できる限界のスピードだったのか。
葵には目の前に来るまでエリスの姿が見えなかった。
神速で繰り出されたエリスの拳を葵が避けることができたのは、ほとんど勘によるものだった。
しかしそんな幸運も長くは続かない。
これまでの経験がまったく通用しないエリスの猛攻に、葵は一歩、また一歩と追い詰められていく。
「やっぱり人間ってその程度なのね!」
エリスが葵の腕をつかんで投げ飛ばした。
これは通常エクストリームにない動きだ。
予想しえなかった行動に、葵はとっさに受身をとった。
葵の息があがっている。
しかし今度のエリスは、その様子に満足していないようだ。
立ち上がれないほどに打撃を与えないと安心できないらしい。
それに葵ひとりに時間を割いていては、あの超能力少女に何をされるかわからない。
琴音は後悔していた。
なぜエリスが来ると分かっていて、スタンガンを持ってこなかったのかと。
護身用にと携行していたスタンガンは研究所の中だ。
だが、今この場を離れるわけにはいかない。
状況は葵に不利だった。
もともと人間とロボットでは力に差がありすぎる。
その上、葵よりも背の高いエリスの方がリーチがある。
同じ軸上で闘ってもこれだけの違いがあるのだ。
まともに相手をして勝てるハズがない。
琴音は自分のふがいなさを呪った。
そして同時に願った。
葵を助ける力が欲しい。
エリスを退ける力が欲しい!
「えっ・・・・・・?」
すぐに琴音に異変が起こった。
右手の異物感に気づく。
そこにはあのスタンガンがあった。
「どうして・・・?」
なとと考えている暇はない。
「松原さん、離れてっ! 早くッ!」
エリスの猛攻をかろうじて防いでいる葵に、琴音の声が届いた。
その言葉に先に反応したのはエリスだった。
時間をかけすぎた。彼女は彼女で後悔した。
あの少女に準備する余裕を与えてしまった。
エリスは葵を突き飛ばすと、琴音に向き直った。
今度は何をするつもりなのか?
琴音がエリスにスタンガンを向ける。
「まっすぐに構えて・・・・・・」
琴音は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「それで? どうするつもり?」
エリスが初めて笑みを浮かべた。
「決まってるでしょっ!」
琴音が引き金をひいた。
オレンジ色の軌跡が立て続けにエリスに飛ぶ。
だがエリスの体には何の変化もなかった。
「・・・・・・!?」
もう一度、琴音はもう一度引き金を引いた。
軽い衝撃のあと、針のような光がエリスを貫いたハズだった。
琴音も葵も目を疑った。
たしかに直撃したと思われた光弾はエリスをすり抜けたのだ。
いや、違う。
エリスというロボットは驚異的なスピードで上半身をくねらせ、光速で迫る光弾を避けていたのだ。
その動きがあまりにも速く、2人には残像でしか見えなかった。
「はぁっ!!」
琴音に意識が集中していた隙に、葵が渾身の力をこめて回し蹴りをはなつ。
不意の一撃にエリスが吹き飛ばされるが、決定打にはならなかった。
格闘技もスタンガンも通用しない。
2人の目に絶望の色が見え始めていた。
「さて、と・・・・・・。そろそろあなたたちの相手も飽きたわね」
葵の攻撃をかわしながら、視線を琴音に向けているエリスが言った。
「十分楽しんだでしょ?」
エリスがまず葵に詰め寄る。
その時。
誰かが2人の間に割って入ってきた。
「もう・・・・・・やめてください・・・・・・。私が、私が行けば済むことですから・・・」
そう言ってエリスの前に立ったのはフュールベだった。
「TETE-1・・・・・・。どうして今まで現れなかったの? セラ・・・・・・”管理者”からの命令は伝わっていたハズよ」
「・・・・・・システムが古く、対応が遅れていたんです・・・・・・」
「ダメよ、ロボットがウソなんて。理由はどうあれ、とにかくアンタの処分は免れないわね」
「分かっています。どんな処罰も受ける覚悟です」
「そうそう。素直が一番」
「ですから・・・・・・そのお二人には手出ししないで下さい! お願いです!」
フュールベがすがるような目で言った。
エリスは少し考えてから、
「不本意だけど、あなたを連れ帰ることが目的だったしね。だけど皮肉ね。あなたのその頼みは、あなたが隠れていたから叶わなかったのよ?」
今や戦意を喪失しつつある葵と琴音を尻目に、エリスが歩き出した。
そんな2人にフュールベが最後の声をかける。
「私はこれから”管理者”のところへ行きます。お二人は一刻も早く、ここを離れてください」
それはフュールベの必死の願いのようでもあった。
「運がよかったわね。さあ、行くわよ」
エリスは二人を憎憎しげに睨みつけると、フュールベを伴ってその場を去った。
力を使い果たした葵と琴音は、2体のロボットの後姿をただ黙って見ているしかできなかった。
先に立ち上がったのは琴音だった。
「また・・・・・・私、また・・・・・・何もできなかった・・・・・・」
フュールベの最後の言葉を思い出した琴音は、後悔の念にうちひしがれた。
「そんなことありませんよ・・・・・・。姫川さんはまた私を助けてくれましたし・・・・・・」
言いながら立ち上がった葵も、自分の力の無さを恨んだ。
「その銃・・・いつの間に持っていたんですか?」
葵が琴音の右手にしっかりと握られたスタンガンを見て言った。
紛れも無くそれは、琴音がALTERを脱出した際に持ち出したものだった。
「それがよく分からないんです。気がついたら私の手の中にあって・・・・・・」
今にしてみれば奇妙な話だ。
もっともそのお陰でいくらか時間を稼ぐことができたのだが。
「でも松原さん、凄いです。まるで別人みたい・・・」
「え・・・?」
「さっきのエリスとの闘い・・・松原さん、この前とは別人みたいでしたよ」
「ああ、あれは・・・・・・」
「・・・・・・?」
「あの時は私がエクストリームのルールで闘ってたからなんです。エリスの動き方はエクストリームにないものだったから対応できなかったんです」
葵は恥ずかしそうに俯いた。
「なるほど、それで・・・・・・」
「ダメですね、私。中途半端にエクストリームを続けていたから実力も中途半端なままで。今回だって私がもっと強ければ・・・・・・」
「相手はロボットなんです。人間がまともに闘って勝てないのは当然ですよ」
「ですけど・・・」
「あなたがそんな弱気でどうするんですか! そんなんじゃ・・・・来栖川さんを失望させるだけです!」
「綾香さん・・・・・・?」
葵が弾かれたように琴音を見た。
「ええ、少し前に聞いたことがあるんです。”葵は私の目標だ。私が唯一、ライバルだと認められる娘だ。だからこんなバカげた争いに葵が巻き込まれるのは
我慢できない”って」
「そう・・・だったんですか・・・・・・」
「だから弱音を吐かないでください。松原さんは私にとっても希望なんですから・・・・・・」
「え? それはどういう・・・・・・」
葵が訊こうとした時、
「松原さん」
琴音が低い口調で言った。
「はい」
葵も短く答える。
「”管理者”の正体を知りたくはありませんか?」
「え・・・・・・?」
琴音の口から出た意外な言葉に葵はとまどった。
「どういうことですか?」
「分かったんです。”管理者”の居場所が。いえ、正確には”管理者”にたどり着く道が」
「見えたんですか・・・・・・?」
「ええ、エリスがなぜ2度も現れたのか、ようやくその理由が分かりました。このすぐ近くに・・・・・・あります」
琴音は空を仰いで目を閉じ、静かに言った。
「場所を見つけた以上、私たちは”管理者”への道を進むことも、やめることもできます」
「・・・・・・」
葵は何も答えなかった。
答えられなかった。
もともと”管理者”を突き止めたいと言ったのは葵のほうだ。
琴音がそれを制止し、いまに至っているだけだ。
琴音の言うとおり、今なら”管理者”にたどり着くことが可能だ。
だが、それはあまりにも軽率すぎないか?
”管理者”への道を進むということは、つまり敵地に飛び込むということだ。
もし、エリスのようなロボットが何体もいたとしたら・・・・・・。
そう選択した葵はともかく、琴音まで自分の選択の犠牲にはできない。
「行きます。行って”管理者”の正体を突き止めます。ただし――私ひとりで、です」
葵の瞳には決意の色が宿っていた。
だが、
「ダメです。私も行きます」
琴音が即座に否定した。
{姫川さんには感謝しています。個人技に走ろうとする私を止めてくれて・・・おかげで今こうして生きているんですから。ですけど・・・私の勝手な判断に
姫川さんを巻き込んで、それで取り返しのつかないことになったら・・・・・・」
葵の必死の主張に、琴音は微笑を浮かべながら言った。
「松原さん、ここに来たとき言ってましたよね。”逃げてるだけじゃ何も解決しない。生きているなら管理者を追いかけよう”って。私、正直あの時、あなたの言うことが
理解できなかったんです。自ら危険に飛び込む考え方がです」
「・・・・・・」
「だから松原さんが間違ってると思いました。だけど、ここにいてもロボットの脅威は消えない。居場所を知られているから何度でもやってくる。
それならこちらから動くことも必要だと考えるようになったんです」
「でも・・・・・・行動しようとしてるのは私です。姫川さんじゃありません! 私には姫川さんを危険から守ることはできません。私のせいで姫川さんが考え方を
変えたのなら思いとどまってください!」
「ダメです! 私はもう行くと決めたんです!」
「どうしてッ!?」
「選択したからです」
「え・・・?」
葵は言葉につまった。
「私がそう選択したからです。松原さんがしたように、私も」
「姫川さん・・・・・・」
葵が潤んだ瞳で琴音を見つめた。
琴音もそんな葵に目をそらすことなく向き合う。
「行きましょう、2人で」
「はい」
葵と琴音。
数奇な運命の中でめぐり合った2人が、まだ見ぬ巨大な敵と相対しようとしていた。
そして・・・・・・。
「見たか?」
「ああ、間違いない」
「あの娘がか・・・・・・? 俺には信じられんが」
そんな少女たちを離れたところから見ていた男が3人。
「お前も見ただろう? さっきのはアポートだ」
「本社からの回収命令はまだだ。時間はたっぷりある。慎重に見極めようじゃないか」
1人がそう言うと、他の2人も納得したように、
「そうだな。それに俺たちはまだ能力の全容をつかんだわけじゃない。ヘタに動いて自滅、なんてことは避けたいしな」
「まさか。相手は女ひとりだ。何も警戒する必要は・・・・・・」
「お前は知識が乏しいからそう言うんだろうが、侮らないほうがいい。あいつらに焼き殺された同業者もいるんだ」
「焼き殺された・・・・・・? どういうことだ?」
「そういう能力を持った奴がいたんだ。何て言ったかは忘れたが、とにかく油断はできない」
「あの女もそうなのか?」
「分からん。だがアポートは間違いなく起こした。となると他の能力に目覚めている可能性もある」
「なるほどな」
男たちはどこか余裕のある笑みを浮かべると、噂の少女――姫川琴音――を見下ろした。